第258話

「何を考え込んでるの。考えごとを一銭で売ってくれない?」

床から天井まで届く窓から身をひるがえった。「別に。仕事のことを考えていただけだ」

レアは信じなかった。「仕事でそんな顔になるわけないでしょ」

「俺のじゃない。ミラのだ」

握りしめたままのスマホに目を落とす。ミラから、パリでの滞在を延ばす、とたった今メッセージが来た。どれくらい延ばすのかは書いていない。ただ、仕事が山積みで人手が足りず、自分もきちんと役割を果たさなければならない、と。言葉どおりだと証明するみたいに、電話をかけても彼女は二文も言わないうちに切ってしまった。

それでも、何かを言い落としている――そんな感覚が、どうして...

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